
持病の薬を飲みながら、禁煙治療を始められるのか
高血圧や糖尿病で毎日お薬を飲んでいると、そこへ禁煙補助薬を重ねて体に負担がかからないだろうか、と気になるものです。血圧や血糖の管理が乱れないか、通院が増えて仕事と両立できるのか——迷われる方は少なくありません。この記事では、喫煙と生活習慣病の関わり、常用薬と禁煙補助薬を併せて用いる際に医師が確認している点、そして内科と禁煙外来を同じ医療機関で並行して受ける流れまでを整理しました。初診時にご準備いただきたいものもまとめています。
この記事の要点まとめ
- 喫煙は血圧や血糖の管理に影響しうるため、持病の治療と禁煙を併せて検討する意義があります
- 禁煙補助薬と降圧薬・血糖降下薬の組み合わせは、医師が状態を確認しながら進めます
- 同一医療機関で内科と禁煙外来を受けると、情報共有や通院の負担軽減につながる場合があります
- 高血圧・糖尿病と禁煙外来の併用が重要視される医学的背景
- 持病の治療薬と禁煙補助薬の相互作用および注意すべき変動
- 内科と禁煙外来を同じ医療機関で並行受診するメリットと費用
- 菅谷クリニックでの初診準備と禁煙外来の受診手順
- よくある質問
- 参考文献
- 監修
高血圧・糖尿病と禁煙外来の併用が重要視される医学的背景
「血圧の薬を飲んでいるのに、たばこもやめないと意味がないのでしょうか」。診察室でよく耳にする問いかけです。生活習慣病の管理と喫煙は、どうしても切り離しにくい関係にあります。
喫煙が血圧上昇とインスリン抵抗性に及ぼす影響
たばこに含まれるニコチンは交感神経を刺激し、末梢の血管を収縮させます。喫煙直後に心拍数と血圧が一時的に上がる、その繰り返しが起きていると説明されています1。1日20本の習慣があれば、こうした変動が一日中断続的に生じている計算になります。
さらに、喫煙はインスリン抵抗性(インスリンが効きにくくなる状態)との関連が指摘されており、血糖コントロールを難しくする要因の一つに数えられています1。たばこの煙に含まれる一酸化炭素が血液の酸素運搬を妨げ、血管内皮にも負担をかけると考えられている点も見逃せません。降圧薬や血糖降下薬で数値を整えていても、喫煙という要因が残っていれば、治療全体の土台が揺らぎやすくなるわけです。
禁煙によって期待できる血管保護と生活習慣病コントロール
禁煙は、動脈硬化の進行に関わる要因を一つ減らす取り組みと位置づけられています。循環器領域では喫煙が心血管疾患の主要なリスク要因とされ、禁煙は予防の柱の一つとして扱われてきました3。高血圧と糖尿病を併せ持つ場合は血管への負荷が重なりやすく、喫煙という要因を取り除く意義はより大きいと考えられています。
とはいえ、禁煙すれば血圧や血糖の数値が必ず下がる、という単純な話ではありません。降圧薬や血糖降下薬による治療は、禁煙後も引き続き必要になるのが一般的です。一方で脂質面ではHDLコレステロールの低下との関連が知られ、呼吸器面では慢性閉塞性肺疾患(COPD)の進行に喫煙が深く関わるとされています。つまり禁煙は、血管・代謝・呼吸機能という複数の領域に同時に関わる取り組みだと言えます。
当院の院長は日本呼吸器学会認定 呼吸器専門医であり、開院前から肺がんをはじめとする呼吸器疾患の診療に携わってまいりました。呼吸器の視点と生活習慣病の視点、その両方から喫煙の影響をお伝えできる点は、当院が大切にしているところです。
持病の治療薬と禁煙補助薬の相互作用および注意すべき変動

併用にためらいを覚える方の多くが気にされるのが、薬同士の飲み合わせです。ここは医師が診察時に必ず確認している部分でもあります。
禁煙補助薬の特徴と降圧薬・血糖降下薬との関係
保険診療で用いられる禁煙補助薬には、皮膚に貼ってニコチンを補うニコチンパッチと、内服タイプの薬剤があります。国内では内服薬の供給状況が変動してきた経緯があるため、どの選択肢を用いられるかは受診時点の状況によって異なります。まずは診察の場で確かめていただくのが早道です。
併用にあたって医師が見ているのは、単純な禁止・許可の線引きだけではありません。ニコチン製剤は交感神経への作用があるため、血圧や心拍の状態、狭心症など心疾患の既往を含めて総合的に判断します。また、喫煙そのものが一部の薬剤の代謝に影響することが知られており、禁煙後に体内での薬の動きが変わる可能性も考慮すべき点になります。糖尿病の治療中であれば、血糖降下薬やインスリンを使用中かどうかで、経過観察の細かさも変わってきます。
いずれにしても、自己判断で持病の薬を減らしたり、市販のニコチン製剤を独自に追加したりすることは控え、処方内容の全体像を主治医に把握してもらうことが前提となります2。
禁煙初期の体重増加や離脱ストレスによる数値変動への対策
もう一つ知っておいていただきたいのが、禁煙開始後しばらく続く体調の揺れです。ニコチンが抜けていく過程では、いらだちや落ち着かなさ、集中しにくさといった離脱症状が現れることがあります1。管理職などストレスの多い環境にある方ほど、この時期の心身の負担を感じやすいかもしれません。一時的な精神的緊張が血圧値に反映される場合もあります。
また、口寂しさから間食が増えたり、味覚の変化で食事量が増えたりして、禁煙後に数kg程度の体重増加がみられることは珍しくありません。糖尿病の治療中であれば、なおさら気がかりでしょう。ただ、体重の変動と喫煙継続による血管への負荷を並べて考えたとき、多くの場合は禁煙を進めながら体重管理を行う方針が採られます。禁煙後の体重をどう扱うかは、個々の状態によって判断が分かれるところです。
実際の工夫としては、無糖の飲料やシュガーレスガムの活用、間食の内容を医師や管理栄養士と相談しておくこと、そして禁煙開始後は家庭血圧の記録や血糖自己測定の頻度を一時的に増やして推移を追うことが挙げられます。数値が動いたときにすぐ相談できる体制があれば、過度に気に病まずに取り組みやすくなるはずです。
内科と禁煙外来を同じ医療機関で並行受診するメリットと費用
「持病はかかりつけ、禁煙は別の医療機関」と分けると、通院回数も説明の手間も増えていきます。同じ医療機関で並行して受けられるかどうかは、続けやすさに直結します。
同一主治医による一元管理と投薬調整のスムーズさ
内科と禁煙外来を同じ医師のもとで受ける利点は、情報が一つにまとまることです。降圧薬や血糖降下薬の処方内容、直近の血液検査データ、家庭血圧の記録。これらを把握している医師が禁煙治療も担当すれば、禁煙開始後の数値の動きを、季節要因や薬の変更と併せて読み解きやすくなります。
禁煙の途中で血圧が上振れした場合も、離脱によるものか、体重増加の影響か、あるいは別の要因かを、経過を知る医師が検討していく形になります。紹介状のやり取りや同じ説明の繰り返しが不要になる点も、働きながら通院する方にとっては実務的な負担軽減につながります。
当院では、呼吸器疾患の専門的な診療とあわせて、高血圧症・糖尿病・脂質異常症といった生活習慣病にも幅広く対応しております。禁煙外来では、診察や検査をもとに患者さまの喫煙歴や喫煙の状況を把握したうえで、実践的なアドバイスをお伝えすることを心がけています2。
禁煙外来の保険適用条件と同日受診における費用の考え方
禁煙治療を保険診療で受けるには、いくつかの要件が定められています。代表的なものは、ニコチン依存症のスクリーニングテスト(TDS)で一定の点数に該当すること、ブリンクマン指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)などの喫煙状況に関する条件、ただちに禁煙を始める意思があること、そして治療について文書で同意することです。35歳以上の方では、1日20本を35年続けていればブリンクマン指数は700となり、この条件に該当する計算になります。
費用については、標準的なプログラムが約12週間で計5回の受診を基本とし、3割負担の場合の総額はおおむね2万円前後が目安とされています。使用する薬剤や検査内容によって前後しますので、詳しくは受診時にご確認ください。
同じ日に生活習慣病の定期受診と禁煙外来を受ける場合、保険診療のルール上、初診料や再診料が二重に算定されるわけではありません。禁煙治療に関する管理料や薬剤料が加わる形になるため窓口負担は通常の定期受診より増えますが、別々の日に通うより移動の時間は抑えられます。算定の詳細は診療内容によって変わりますので、受付でお尋ねいただければご説明いたします3。
菅谷クリニックでの初診準備と禁煙外来の受診手順
最後に、実際に受診される際の準備と流れをご案内します。持病がある方ほど、初回に情報がそろっていると診察が進めやすくなります。
お薬手帳や検査結果の持参と医師への申告ポイント
まずお持ちいただきたいのがお薬手帳です。他院で処方されている降圧薬や血糖降下薬、インスリンの種類と用量が分かれば、禁煙補助薬との組み合わせを検討する材料になります。手帳がない場合は、薬局で受け取る明細書や薬剤情報提供書、実際の薬のシートをそのままお持ちいただいても差し支えありません。
あわせて、直近の健康診断の結果や血液検査データ(HbA1c、血糖値、脂質、腎機能など)、ご家庭で測っている血圧の記録があれば役立ちます。市販薬やサプリメント、漢方を常用されている場合も、遠慮なくお知らせください。
診察時にお伝えいただきたいのは、次のような内容です。
- 心疾患・脳血管疾患の既往や、精神科領域の通院歴・服薬歴
- 1日の喫煙本数と喫煙を始めた年齢(ブリンクマン指数の算出に用います)
- 過去に禁煙を試みた際の経過や、そのとき感じた体調の変化
- 加熱式たばこの使用状況(紙巻きたばこと同様に問診の対象になります)
呼気一酸化炭素濃度測定から始まる全5回の標準通院ステップ
初診では問診とニコチン依存度の確認を行い、呼気中一酸化炭素濃度測定器を用いて呼気に含まれる一酸化炭素の量を調べます。数値として目に見えることが、ご自身の喫煙状況を客観的に振り返る手がかりになります。当院では16列マルチスライスCTやレントゲン、肺機能検査機器も備えており、長年の喫煙歴がある方には呼吸機能や肺の状態の確認をご提案する場合もあります。
その後は標準的なプログラムに沿って、初診から2週間後・4週間後・8週間後・12週間後の計5回を目安に通院していただきます。各回で呼気検査や体調の確認、離脱症状への対応、薬剤の調整を行い、持病の数値についても併せて見ていきます。
当院は予約制の診療(発熱外来・予防接種・各種検診)を除き、予約なしで受診いただけます。診療時間内に直接お越しください。ご不明な点は、お電話(052-871-5941)でもご相談を承っております。クリニック前には20台分の専用駐車場をご用意しており、お車での通院にも対応しています1。
よくある質問
Q. 糖尿病の治療中ですが、禁煙したほうがよいのでしょうか。
A. 喫煙はインスリン抵抗性や動脈硬化の進行に関わる要因とされており、糖尿病の管理という観点から禁煙は望ましい取り組みと考えられています。ただし禁煙後の体重変化などもありますので、主治医と方針を共有しながら進めていかれることをおすすめします。
Q. 禁煙すれば高血圧の薬をやめられますか。
A. 禁煙によって高血圧そのものがなくなるとは言えません。降圧薬による治療は禁煙後も継続が必要になるのが一般的です。薬の増減は必ず医師の判断のもとで行ってください。
Q. 禁煙外来を実施している医療機関が限られているのはなぜですか。
A. 保険診療で禁煙治療を行うには、施設基準の届け出や呼気一酸化炭素濃度の測定体制など、いくつかの要件を満たす必要があります。そのため対応している医療機関は一部にとどまります。受診前に各院へご確認ください。
Q. 加熱式たばこを使っている場合も対象になりますか。
A. 加熱式たばこの使用も問診の対象となり、状況に応じて保険診療の要件を満たすかを判断します。使用本数や期間を含めて、診察時にお伝えください。
Q. 持病の定期受診と同じ日に禁煙外来を受けられますか。
A. 同じ医療機関であれば、同日に併せて受診いただける場合があります。診療内容によって算定や所要時間が変わりますので、事前にお問い合わせいただくと調整しやすくなります。
参考文献
1. 厚生労働省「健康づくりサポートネット(疾病・健康に関する情報)」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/
2. 日本内科学会 https://www.naika.or.jp/
3. 日本循環器学会 https://www.j-circ.or.jp/
産業医科大学医学部 卒業
産業医科大学 第二外科
1996年
九州厚生年金病院
(現:JCHO九州病院) 外科
1997年
北九州市立医療センター 呼吸器外科
1998年
産業医科大学 大学院
博士課程医学博士 取得
2002年
産業医科大学 第二外科 助教
2004年
産業医科大学 第二外科 講師
2007年
中部ろうさい病院 呼吸器外科部長
2016年
中部ろうさい病院
呼吸器病センター長(兼)
2019年
名古屋市瑞穂区にて菅谷クリニック開院
日本外科学会認定登録医
日本呼吸器学会認定 呼吸器専門医
肺がんCT検診認定医
身体障害者福祉法第15条指定医
臨床研修指導医
緩和ケア研修修了
日本呼吸器外科学会評議員
<所属学会>
日本外科学会
日本呼吸器外科学会
日本胸部外科学会
日本呼吸器学会
日本呼吸器内視鏡学会
日本肺癌学会
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