COPDを放置すると進行はどう進むのか、肺機能を守るための治療法|名古屋市瑞穂区の内科・外科・呼吸器内科|菅谷クリニック

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COPDを放置すると進行はどう進むのか、肺機能を守るための治療法

COPDを放置すると進行はどう進むのか、肺機能を守るための治療法

息切れや咳をそのままにしないための基礎知識


COPD(慢性閉塞性肺疾患)を治療しないままにすると、気道や肺胞の変化が少しずつ進み、階段での息切れからふだんの歩行へと困りごとが広がっていきます。ただ、進み方には人によって差があり、今のうちに肺機能検査を受けて禁煙や吸入薬などの対策を始めることで、悪化のペースをゆるやかにすることを目指せます。この記事では、症状が見のがされやすいわけや急性増悪(急な悪化)で気をつけたい点、失われた肺の働きと治療で目指せることの違い、受診のめやすを順にまとめました。


この記事の要点まとめ


  • COPDははじめのうちは気づきにくく、タバコを吸ってきた量や急な悪化(増悪)、呼吸の働きなどによって、進み方の速さは人によって違います。
  • 肺機能検査でいまの状態をたしかめ、禁煙・吸入薬・呼吸リハビリなどで、進み方をゆるやかにしたり症状をおさえたりすることを目指します。
  • 長引く咳や動いたときの息切れは外来で相談し、じっとしていても強く息苦しいときや強い眠気があるときは、すぐに受診します。


COPDを放置すると息切れ・咳・肺機能の低下はどう進行するのか

COPDを放置すると息切れ・咳・肺機能の低下はどう進行するのか

COPDは、かつて肺気腫や慢性気管支炎と呼ばれていた病気をまとめた呼称です。未治療のまま経過すると、肺の中の空気の通り道や小さな袋が少しずつ変化し、呼吸のしやすさや全身の体力に影響が及んでいきます。まずは、なぜ初期には気づきにくく、どのような仕組みで段階的に進んでいくのかを確認していきましょう。


階段の息切れを年齢のせいと思ってしまう理由:初期症状に気づきにくい仕組み


COPDの初期は、安静にしているときにはほとんど症状が出ません。人間の肺にはもともと大きな予備力があり、肺胞(酸素を取り込む小さな袋)や気管支の一部が傷ついても、残りの部分で呼吸を補えてしまうためです。


タバコの煙などの有害物質を長年吸い込むと、気管支に慢性の炎症が起きて空気の通り道が狭くなります。さらに肺胞の壁が壊れて袋が粗くなることで、吸った空気を最後まで吐き出しにくくなります。それでも変化は年単位でゆっくり進むため、階段や坂道での息切れを「年齢のせい」「運動不足のせい」と受け止めてしまいやすいのが実情です。


ここでよくある誤解が、息苦しさを避けて無意識に動く量を減らしているのに、自分では「症状が落ち着いている」と感じてしまうことです。歩く速さが落ちてご家族に指摘される、荷物を運ぶ途中で立ち止まる回数が増えるといった変化は、生活範囲が狭まり始めているサインかもしれません。また、長引く咳や痰を「風邪の名残」と決めつけず、背景に気道の病気が隠れていないか確かめる視点が大切になります。


進行の速さを左右する要因:喫煙の継続・年齢・症状・検査結果で異なる個人差


「COPDはどのくらいの速さで進むのか」という疑問に対し、すべての方に当てはまる一律の速度はありません。進行のペースは、いくつかの要因が重なり合って個人差が生まれます。


進行を速めやすいものとしては、まずタバコを吸い続けていることや、これまでに吸ってきた量が挙げられます。風邪などをきっかけに症状が急に悪くなる「増悪(ぞうあく)」をくり返すこと、診断されたときの呼吸機能の数値、ふだんの息切れの強さ、心臓病など別の病気があることも関わります。一方で、タバコを吸わない方でも、まわりの煙を吸いこむ受動喫煙、粉じんや化学物質を扱う職場、大気の汚れ、子どものころの呼吸器の感染症などが関わって発症する場合があります。


同じように、平均して何年生きられるのかという余命についても、重症度や治療の有無、生活習慣によって大きく異なるため、一概に年数で示すことはできません。ご自身の肺が今どの位置にあり、どのくらいのペースで変化しそうかを把握するには、まず一度検査を受けて状態を知ることが出発点になります。


風邪の後に咳と痰が長引いたら要注意:急性増悪で肺機能が下がることも


COPDの経過で特に注意したいのが、風邪や気管支炎などの感染症をきっかけに、息切れや咳、痰の量が普段より急に強まる「急性増悪」です。一度の増悪をきっかけに、それまで保たれていた肺機能や全身の体力が元の水準まで戻りにくくなり、階段を一段ずつ下りるように状態が変化していくことがあります。


重い増悪が起きると、肺の中で空気の入れ替えがうまくいかなくなり、体の中に二酸化炭素がたまりやすくなります。二酸化炭素がたまる状態が進むと、頭痛や血圧の上昇、手のふるえ、意識がぼんやりするといった変化が出て、入院での管理が必要になる場合もあります 。肺炎や増悪は、ご本人の見た目以上に体の中で重く進んでいるケースも少なくありません。


中くらい以上の増悪を起こさず、症状の点数や呼吸のはたらきの数値が悪くならない状態を保つこと(病状の安定)も、治療のめあての一つとされています 。ふだんから風邪をこじらせないよう備え、増悪の波を減らすことが、これからの暮らしを守るかぎになります。


壊れた肺は戻りにくい、それでも治療で目指せる3つのこと


一度壊れてしまった肺胞の壁や、変形した気道の構造そのものを、薬や治療で元の健康な状態へ戻すことは難しいとされています。この事実を知ると「今さら受診しても意味がないのではないか」とためらわれるかもしれませんが、今から治療を始めることには明確な役割があります。


治療によって目指せることは、大きく次の3つに整理できます。


  • 進行のペースを緩やかにすること:喫煙などの刺激を断ち、残っている肺機能低下のスピードを抑えます。
  • 急性増悪を減らすこと:気道の状態を整え、急な悪化や入院のリスクを遠ざけます。
  • 息切れを和らげて動ける量を保つこと:空気の通りを助け、仕事や外出、ご家族のサポートを続けられる体力を維持します。

COPDは肺だけの病気にとどまらず、呼吸に多くのエネルギーを使うことで体重減少や筋力の低下を招いたり、心臓や血管の病気、生活習慣病を併発しやすくなったりと、全身に影響を及ぼします。「まだ働けているから」と先延ばしにするのではなく、動ける今のうちに手を打つことが、これまでの暮らしを長く続けるための備えとなります。


ポイント

壊れた肺胞を元に戻すことは難しくても、治療によって「進行を緩やかにする」「急な悪化(増悪)を減らす」「動ける体力を保つ」という3つの目標を目指すことができます。


COPDの進行を抑え肺機能を守る検査と治療:受診を迷うときの判断基準

COPDの進行を抑え肺機能を守る検査と治療:受診を迷うときの判断基準

息切れや咳が気になったとき、どのような検査で診断がつき、毎日の生活と治療をどう両立していくのかを知っておくと、受診へのハードルが下がります。ここでは検査の内容と治療の選択肢、そして外来受診と救急対応を見分ける目安をお伝えいたします。


肺機能検査(スパイロメトリー)で何を確かめるのか:診断と重症度判定の流れ


COPDの診断で中心となるのは、スパイロメトリーと呼ばれる肺機能検査機器を用いた検査です。マウスピースをくわえ、合図に合わせて胸いっぱいに息を吸い込み、できるだけ勢いよく最後まで吐き出すことで、肺活量や換気機能を測定します。


この検査では、大きく息を吸ってから最初の1秒間で吐き出せる空気の量(1秒量)と、それが全体の肺活量に占める割合(1秒率)、そして同年代の平均と比べた「肺年齢」を確認します 1。他の病気を除いたうえで、気管支を広げる薬を吸ったあとに測った1秒率が70%未満であることがCOPDの診断の目安になります 1。1秒量が予測値に対してどの程度保たれているかによって、気流閉塞の重症度を段階的に判定します。


ただし、息切れや長引く咳は、気管支喘息や心不全、肺炎、肺がんなど他の病気でも起こります。これらを見分けるため、胸部レントゲンや、断面を詳しく調べるマルチスライスCTを使います。さらに、心臓の負担をみる心電図検査装置や超音波診断装置、気道のアレルギー性炎症を測る呼気中一酸化窒素濃度測定器なども組み合わせて総合的に評価いたします。


禁煙・吸入薬・呼吸リハビリ・ワクチンの役割と使い分け


COPDの管理は、患者さまの病状や生活スタイルに合わせて複数の対策を組み合わせて進めます。それぞれの目的と対象を以下の表に整理いたしました。


対策の種類主な役割・目的対象となる方・取り入れ方の目安
禁煙・禁煙外来肺機能低下の進行を抑える土台をつくる喫煙を続けているすべての患者さま
気管支拡張薬(吸入薬)気道を広げて息切れを和らげ、増悪を減らす日常の息切れがある方や増悪を予防したい方
呼吸リハビリテーション呼吸の工夫と運動で動ける体力・筋力を保つ息切れで動く量が減り始めている方
ワクチン接種増悪の引き金となる感染症を予防するインフルエンザや肺炎球菌の予防が推奨される方
在宅酸素療法不足する酸素を補い、心臓や全身の負担を減らす進行により血液中の酸素濃度が低下している方

すべての段階で土台となるのが禁煙です。タバコがやめられない背景にはニコチン依存という医学的な仕組みがあり、ご自身の意志の強さだけの問題ではありません。過去に禁煙がうまくいかなかったご経験があっても、禁煙外来で補助薬の処方や、再び吸いやすくなる場面を予測して避ける工夫を一緒に考えることで、再挑戦の道が開けます。条件を満たせば公的医療保険が適用されますが、条件を満たさない場合は自由診療(公的医療保険が適用されない全額自己負担)となります。費用は医療機関や処方内容によって異なりますので、診察のうえでご案内いたします。なお、禁煙補助薬のバレニクリンでは、吐き気や頭痛、便秘、胃のあたりの痛み、変な夢、眠れないといった副作用が出ることがあるため、体調を確かめながら調整します 。


気管支を広げる吸入薬は、症状があるときだけ使うのではなく、毎日続けることで気道の通りを保ちます。また、ふだんの吸入治療を続けても効果が十分でない場合に限って、デュピルマブという生物学的製剤を皮下注射する治療が国内でも使われます 。使うかどうかは、血液検査の好酸球という細胞の数など、2型炎症に関わる値をみたうえで決めます 2。


高血圧症や糖尿病などの生活習慣病もある場合は、食事や運動、お薬による治療の考え方をふまえながら、からだ全体の状態もあわせてみていきます 。


外来で相談する目安と、すぐに受診が必要な息苦しさの違い


受診のタイミングを迷われたときは、症状の現れ方を「通常の外来で相談する段階」と「速やかな対応が必要な段階」の2つに分けて判断してください。


まず、通常の診療時間内に外来受診をおすすめする目安は次の通りです。

  • 咳や痰が数週間以上続いている、または風邪が治った後も咳だけが長引いている
  • 同年代の人と同じペースで歩くと息が切れる、荷物を運ぶ途中で立ち止まるようになった
  • ご家族から「歩くのが遅くなった」「息遣いが荒い」と指摘された
  • 健康診断や検診で肺機能や胸部の異常を指摘されたままになっている

一方で、様子を見ずに速やかな受診や救急要請を検討すべきサインは次の通りです。

  • 安静に座っていても息苦しく、まとまった文を話すのがつらい
  • 唇や爪の色が紫色っぽく変わっている(チアノーゼ)
  • 強い眠気がある、呼びかけへの反応が鈍い、頭が強く痛む(二酸化炭素の蓄積が疑われる状態)
  • 急な発熱とともに、黄色や緑色など色の濃い痰が増えた、または胸の痛みを伴う
  • 普段使っている吸入薬を使用しても息苦しさが和らがない

後者のサインがある場合は、重い急性増悪や肺炎を起こしている可能性があります。「明日まで待とう」と我慢せず、速やかに医療機関へご連絡ください。


初診から再診までの流れ:瑞穂区の当院で相談できる検査と禁煙外来


呼吸器内科などの外来を受診された場合、まずは問診でいつからどのような場面で息切れや咳が出るか、これまでの喫煙歴や職歴などを詳しく伺います。


続いて、呼気中一酸化炭素濃度測定器でいまのタバコの状況をたしかめたり、肺機能検査や胸部レントゲン、必要に応じてCT検査を行ったりして、肺と気道の状態を数値や画像でみていきます。診断がついたあとは、症状の強さやお仕事の都合などに合わせて、吸入薬や禁煙の手助け、暮らし方のアドバイスの方針を決めます。再診では、息切れの変わり方や肺機能の移り変わり、吸入薬をうまく吸えているか、禁煙を続けるなかでの困りごとなどを、くり返し確かめてまいります。


一般内科の領域である高血圧症や糖尿病などの管理もあわせて相談しておくと、通院先を分けずに全身の経過を確認しやすくなります。健診の結果票やお薬手帳をお持ちでしたら、受診時にご持参ください。少しでも息切れや長引く咳が気になるときは、どうぞお早めにご相談ください。


ポイント

安静時の息苦しさや強い眠気があるときは速やかな受診が必要です。階段での息切れや長引く咳の段階であれば、お薬手帳や健診結果を持ってまずは外来でご相談ください。


よくある質問(FAQ)


Q1. タバコをやめられないのは意志が弱いからでしょうか?今からでも禁煙外来に相談できますか?


タバコがやめられない主な原因は、ニコチンが脳に作用して起こる「ニコチン依存症」であり、ご自身の意志の強さだけの問題ではありません。過去に自力での禁煙がうまくいかなかった方でも、医療機関で禁煙補助薬を使ったり、吸いたくなる場面への対処法を整理したりすることで負担を和らげることができます。治療の途中であっても、いつでも禁煙のサポートをご相談いただけます。


Q2. 禁煙を始めて10日〜12日目くらいにまた吸いたくなるのはなぜですか?禁煙中に気をつけることはありますか?


禁煙して10日〜12日目ごろは、ニコチンが切れることで起こる体の症状(離脱症状)がまだ残るなかで、「食後の一服」「仕事の合間」といった習慣や心理的なつながりから、ふと吸いたくなる波が訪れることがあります。離脱症状は禁煙後数日がピークで、その後数週間かけて少しずつ軽くなることが多いとされます。


禁煙中に避けたいのは「1本だけなら大丈夫」と吸ってしまうことで、これが再開のきっかけになりやすいため注意が必要です。吸いたくなったときは、冷たい水や熱いお茶を飲む、深呼吸をする、場所を移動するなど、別の行動に置き換える工夫が推奨されます。


Q3. 仕事をしていても、COPDの通院や吸入薬の治療は続けられますか?


はい、一般的には、お仕事と両立しながら治療を続けている方も多くいます。気管支を広げる吸入薬は毎日続けて使う薬で、使う時間帯などは医師や薬剤師と相談しながら生活に合わせて決めていきます。一般的には、病状が落ち着いていれば通院の間隔もスケジュールに合わせて調整されることが多いため、お仕事の状況を担当医へお伝えください。


Q4. 夜間によく目が覚めたり、日中に強い眠気が出たりするのもCOPDと関係がありますか?


COPDがある方では、夜間の咳や息苦しさで眠りが浅くなるほか、睡眠中に呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群」を合併しているケースもあります。また、COPDが進行して体の中に二酸化炭素がたまりやすくなると、日中に強い眠気や頭痛が現れることもあります。眠りの質やいびき、昼間の眠気が気になる場合も、呼吸器の診察とあわせて医師へご相談ください。


参考文献


1. COPDかも…。どうしたらわかりますか?|ぜん息などの情報館|大気環境・ぜん息などの情報館|独立行政法人環境再生保全機構. https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/copd/about/04.html

2. デュピクセント皮下注300mgペン/デュピクセント皮下注300mgシリンジ/デュピクセント皮下注200mgペン/デュピクセント皮下注200mgシリンジ 添付文書(医薬品医療機器総合機構). https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/780069_4490405G1024_1_19


菅谷 将一

医師


菅谷クリニック

院長

菅谷 将一

▶ 監修者プロフィール

経歴
1995年
産業医科大学医学部 卒業
産業医科大学 第二外科
1996年
九州厚生年金病院
(現:JCHO九州病院) 外科
1997年
北九州市立医療センター 呼吸器外科
1998年
産業医科大学 大学院
博士課程医学博士 取得
2002年
産業医科大学 第二外科 助教
2004年
産業医科大学 第二外科 講師
2007年
中部ろうさい病院 呼吸器外科部長
2016年
中部ろうさい病院
呼吸器病センター長(兼)
2019年
名古屋市瑞穂区にて菅谷クリニック開院
資格・所属学会
医学博士
日本外科学会認定登録医
日本呼吸器学会認定 呼吸器専門医
肺がんCT検診認定医
身体障害者福祉法第15条指定医
臨床研修指導医
緩和ケア研修修了
日本呼吸器外科学会評議員
<所属学会>
日本外科学会
日本呼吸器外科学会
日本胸部外科学会
日本呼吸器学会
日本呼吸器内視鏡学会
日本肺癌学会